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Special Interview 麻生久美子

怖くて逃げ出したくもなるけど、舞台に挑戦できるのは幸せです。

 これまでに数々の映画賞を受賞し、今や映画界になくてはならない存在となった麻生久美子さん。映像作品を中心に活躍する一方で、2009年からは舞台にも出演。2015年3月5日より最新作『結びの庭』の公演が決定している。今回は、舞台作品の魅力と本番を前にした心境を聞いた。
「いつかは舞台をやってみたいという気持ちはずっとありました。でもやっぱり怖かったんです。もっと若いうちにやってしまえば、また違ったのかもしれないですけど。周りの役者さんたちからは“舞台はとにかく1本目が大事。1本目で失敗すると二度とやりたくなくなるよ”と脅されていたので(笑)。
 そんなときにドラマ『時効警察』で共演した岩松了さんが作・演出を手がける舞台『マレーヒルの幻影』に呼んでいただいて。こんなチャンスはそうないし、出演できることが素直に嬉しかったです」
 岩松了さんと言えば、岸田國士戯曲賞、紀伊國屋演劇賞、読売文学賞などの受賞歴を持つ実力派の劇作家・演出家として知られる。演劇界では稽古が厳しいことでも有名だが…。
「当時はすべてが未知の世界で、分からないことばかり。とにかく緊張していて細かいことは記憶にないけど、厳しい稽古だったのはよく覚えています。一番驚いたのは“意味は考えなくていいから、とりあえずセリフを言って”と言われたこと。今まで映画やドラマのセリフを覚えるときは、そのセリフの意味を考えて理解した上で発するようにしてきたのですが、まったく逆の考え方だったのがすごく衝撃的で。意味を考えてセリフを言おうとすると、どうしてもスピードが遅くなるんです。岩松さんの作品だからなのか、舞台はすべてそうなのか分からないですけど、とりあえずセリフをぶわーっと早く言って欲しいと。そのうちに意味はついてくるから、と言われました。内心は“え!意味わからないままセリフしゃべっていいんですか!?”って。あのときは本当に驚きました」
 本番が始まってからも毎日緊張の連続で、心から気が休まる日はなかったと語る。それでも舞台に立ち続けるのはなぜなのだろう。
「実はまだ、舞台の魅力はあまり分かっていないんです。楽しいと思えるところまで達していないというか。お芝居という意味では映像も舞台も同じかもしれないのに、舞台となると急に難しく感じて固くなってしまう。表現の仕方が違うし見られ方も違うから、そこを意識してしまうんでしょうね。初舞台のときは、役のことやお話のことがやっと少し分かってきたかな、と思ったところで本番が終わってしまって消化不良な部分もあった。先日、そのときの台本を久々に読んでみたら、色々と発見があって軽くショックを受けました。なぜあの時に分かってなかったんだ私は!って。だから今回の舞台では、その気づきをもっと早くできたらいいな。本当に挑戦しがいがあるというか、舞台となるとできないことが急に増えるんですよね。でも、できないことができるようになるって嬉しいじゃないですか。この年齢になって挑戦したいことや難しいことがあるのは刺激的だし、幸せだと思う。その壁を少しずつ乗り越えていきたいですね」
 また、数々の舞台に出演してきた宮藤官九郎さんとの共演も話題に。
「キャストの中で私が一番舞台経験が浅いので、足を引っ張らないように頑張りたいです。きっと宮藤さんは舞台の上で自由でいられる人だと思うので、いい刺激を受けてできるだけ近づきたいと思います」
 これから舞台に立つことへの不安と、新しいことに挑戦できる喜びの間で複雑に揺れる心境を語ってくれた麻生さん。今後も舞台への挑戦は続くのだろうか。
「続けていきたいというか、続けていかなきゃいけないと思っています。そうしないと自分が成長しないような気がして。本音を言えば、すごく怖くて逃げ出したい。本番前は緊張するし、毎日毎日セリフの確認をし続けちゃう。本番が始まって何日か経つと、早く終わらないかな、残りあと何公演だっけ?って数えたり(笑)。そういうことを考えちゃうんです。私、心が弱いところがあるので。初舞台を終えたときは“やったー!解放されたー!”ってすっごく喜んじゃって。でも不思議なことに、半年くらい経つとまた岩松さんの舞台に出たいと思っている自分がいました。自分の意外にMっぽい一面を発見しましたね。だから今回も、終わった直後は解放感があるかもしれないけど、きっとまたやりたくなるだろうなって思います」
 現在、麻生さんは仕事と両立しながら育児にも奮闘中。仕事へのスタンスも変わりつつあるという。
「子どもが生まれてからは、ひとつひとつの仕事により集中したいという気持ちが強くなりました。両立は大変だけど、何とかなるものだなと。もちろん、周りの人の理解と協力があるからこそです。私はタフで心が強い人に憧れているので、舞台の経験を重ねるうちにちょっとずつ強くなれたらいいですね。難しいことやできないことがたくさんあるのは幸せなことだと思うから、マイペースながらも常に上を目指してがんばります!」


TEXT / Yukari Tanaka
PHOTO / Hideyo Fukuda(Linx)
STYLING / Mika Nagaoka
HAIR&MAKE / Yumi Narai

Profile
1978年6月17日生まれ、千葉県出身。1998年に映画『カンゾー先生』でヒロインを演じ、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。2001年『贅沢な骨』、2007年『夕凪の街 桜の国』などでも数多くの映画賞を受賞する。2006年、2007年に放送されたTVドラマ『時効警察』ではコミカルな演技で新境地を開拓。以降、映画、ドラマを中心に幅広く活躍中。現在TVドラマ『怪奇恋愛作戦』に出演中。舞台は2009年『マレーヒルの幻影』、2013年『断食』に続いて3作目。


VegasM&Oplaysプロデュース『 結びの庭』
 作・演出/岩松了 
 出演/宮藤官九郎、麻生久美子、太賀、安藤玉恵、岩松了
 公演/2015年3月5日(木)~25日(水)本多劇場ほか、全国7都市にて
 問い合わせ/森崎事務所 TEL 03-6427-9486


(C)撮影:三浦憲治

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