ホーム > Special Interview 常盤貴子

Special Interview 常盤貴子

 常盤貴子さん主演の映画『向日葵の丘 1983年・夏』がまもなく公開される。 まだ携帯電話もパソコンもない1983年と現代を舞台に、過去と現在をつなぐ感動の物語。 日本版『ニュー・シネマ・パラダイス』とも言えるこの作品の主人公を、常盤さんはどんな気持ちで演じたのか? 貴重な撮影秘話なども交えたインタビューをお届けする。


マイク、照明、カメラ、俳優… 映画はすべてがそろって初めて完成する総合芸術だと思う

  『向日葵の丘 1983年・夏』は数々の感動作を世に送り出し、海外からも注目を集める太田隆文監督が手がける青春ノスタルジー映画。常盤さん演じる多香子は、東京で売れないシナリオライターをしている。ある日、故郷で暮らす高校時代のクラスメートから連絡が来るが、その内容は「病気であと数ヶ月の命」というものだった。多香子は高校時代の悲しい思い出を胸に、30年ぶりの帰郷を決意する。
 過去の悲しい出来事と向き合うことになる主人公・多香子の印象は? 「台本を読んでとても共感しました。それがこの映画に出演したいと思った一番の理由です。多香子には多くの大人が抱えているであろう悩みというか闇があって、そこに光を当てた作品。闇を抱えたまま30年という月日が流れてしまったけど、そのままにしておいてはいけないという気持ちもあったと思う。多香子が帰郷したのは親友の命があとわずかという悲しい理由だったけど、ただならぬ理由だからこそ前に進めたんじゃないかな。
高校時代の親友を演じた田中美里さん、藤田朋子さんとは今回が初共演でした。不思議なもので、お会いしてすぐに昔からの親友のように打ち解けました」
 劇中では、多香子が高校生だった1983年の様子も描かれる。レコードやビデオテープ、街の映画館など、当時を象徴するセットや小道具がノスタルジーを誘う。常盤さんにとっての青春時代の思い出を聞いてみると、小学4年生から高校1年生までを過ごした兵庫県西宮での出来事が印象的だという。
「西宮に住んでいた期間は7年間と短いけど、やっぱり多感な時期を過ごした場所でもあるので強く記憶に残っています。関西に馴染むタイプだったのか、横浜から西宮に転校して1週間くらいでもう関西弁を使いこなしていて、なんでやねん! とか言ってた(笑)。私の場合は引っ越した影響で『ふるさと』というものが曖昧になってしまったので、ふるさとに対する憧れがずっとあって。今は色々なところで撮影をするたびに心のふるさとがちょっとずつ増えているので、すごくありがたいです」  また、本作には昨年常盤さんが出演した大林宣彦監督の映画『野のなななのか』のスタッフが多数参加。再び同じ現場に入れることを楽しみにしていた。
「以前お世話になったスタッフの方々とまた一緒に仕事ができると知って、これは縁だなと。大林組のスタッフはまさに『映画人』がそろっていて、家族のように近い関係性で撮影が進んでいきます。最近はタレントとスタッフがきっちり分かれている現場も多いけど、昔は照明部、撮影部、録音部、俳優部のようにそれぞれが横並びで、本番ギリギリまで色々な意見を交わし合っていいものを作ろうとみんなが必死だったと思うんです。私もその時代を経験したわけではないので先輩の言葉や本などから学んだことですが、大林組にはそういう世界観がそのまま残っていて、すごく感動しました。『向日葵の丘』で、みなさんとまた素敵な日々が過ごせるのが嬉しかったです」
 撮影現場では、各所からさまざまな意見が飛び交うことも珍しくなかった。その一方で『意見が飛び交わない面白さ』もあったと語る。
「本番前に意見を出し合って色々と決めておくパターンとは違って、頭の中でそれぞれが描いていたものをその場で発表して作り上げていくやり方もあります。お互いがどんな表現をしてくるのか、頭の中を探る作業が面白いなって。共演の俳優さんもどんな芝居をされるのかが事前に分からないから、本番がすごく楽しみなんです。そうくるか! って驚くことも結構あります(笑)。声を録ってくれる録音部がいて、照明を当ててくれる照明部がいて、私たち俳優部がいて、それをちゃんとカメラに収めてくれる撮影部がいて… 全部がそろって初めてその一瞬が作り上げられる。どんな結果でも正解で不正解はなく、失敗したとしても面白い。そういった総合芸術が素晴らしいなと思うし、一瞬一瞬を楽しむライブ感がマイブームなのかもしれません」
 プロフェッショナルが集まるからこそ生まれるライブ感や、ちょっとしたハプニングも楽しめるようになったと語る常盤さん。女優としてのキャリアを重ねていく中で、出演作を決めるポイントも変わってきたそう。
「分かりやすく言うと、好きなものしかやらなくなりました。以前は周りとのバランスや自分の中でのバランスを考えていたけど、いい意味で空気を読まなくなってきたというか。やっておいたほうがいいよね、くらいの理由ではやらなくなった。この役がやりたい! っていう気持ちだけで本当に自分がやりたいことを優先するので、1本1本の作品に対してより責任が持てるし、すべてのことに愛情を注げるようになったと思います。私はとにかく人との出会いが楽しくてこの仕事をやっているので、素敵な作品との出会いはもちろんですが、素敵な人たちとの出会いが多くあるといいですね。知らない人たちの中に飛び込む怖さはもちろんあるけど、そこを恐れずに色々な役に挑戦していきたいです」


TEXT/Mari Hayashi
PHOTO/Hideyo Fukuda
STYLING/Masumi Miyazaki(likkle more)
HAIR&MAKE/Toh(Rooster)

Profile
1972年4月30日、神奈川県生まれ。1991年に女優デビュー。その後、数々のドラマ、映画で主役やヒロインを演じる。代表作は『愛していると言ってくれ』、記録的な視聴率を樹立した『ビューティフルライフ』、『カバチタレ!』、『天地人』、『TAROの塔』、映画『赤い月』、『20世紀少年(3部作)』など。2014年公開の映画『野のなななのか』で、第29回高崎映画祭最優秀主演女優賞を受賞。現在、NHK連続テレビ小説「まれ」に出演中。


Vegas『向日葵の丘 1983年・夏』
監督/太田隆文 製作総指揮/井上浩一
出演/常盤貴子、田中美里、藤田朋子、津川雅彦 他
8月22日(土)より全国順次


■Monthly Pick Up 賀来賢人