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Cover Interview 陽月華

元宝塚歌劇団宙組の娘役トップとして活躍し、退団後は舞台を中心に映画、ドラマ、バラエティなど新たなフィールドで存在感を発揮する陽月華さん。初主演映画『かぞくわり』では、天命に生きる道を選んだ主人公を体当たりで熱演。映画への想いや撮影でのエピソード、そして新年の抱負などを聞いた。

私の性格は、怖がりでネガティブ
でも、そんな自分も受け入れられるようになってきた
今は、ぐるっと一周回って“ 超ポジティブ”なんです!

  映画『かぞくわり』は、古都・奈良を舞台に崩壊した家族の行く末をユーモラスなタッチで描き、今の日本において“守るべきもの”という普遍的なテーマに向き合った意欲作。地元・奈良で精力的に映画制作活動をする塩崎祥平監督が、民俗学者・折口信夫氏の小説「死者の書」をモチーフに脚本を書き上げた。
 陽月さん演じる主人公の堂下香奈は、38歳・独身・実家暮らし。家族の反対により画家の夢を絶たれ無気力な生活を送っていたが、離婚した妹が姪を連れて実家に戻ってきたことで居場所をなくす。ところが、実は香奈は伝説の姫の生まれ変わりで、不思議な男性との出会いをきっかけに再び絵の世界に没頭していくという物語だ。
「塩崎監督のオリジナル脚本なので、ひとつひとつに強いこだわりを感じました。でも監督はとても柔軟な方で、ご自身のやりたいことの核の部分は決してブレないのですが、それ以外はキャストの提案を受け入れてくださり、話し合いをしながら作っていけたのでとても面白かったです」
 監督が描く世界観を共有するため、撮影初日には台本を見ながらのディスカッションが行われたという。以前から監督と親交があり、香奈の父親役を演じた小日向文世さんの提案によって実現した。
「小日向さんが率先して「撮影に入る前にみんなで台本を見直そう」と言ってくださって。監督とキャストが結構長い時間をかけて、それぞれのシーンがどういう意味を持ち、登場人物はどんな気持ちでその場にいるのかなどの共通認識を深める時間を作ることができました。この時間があったから、全員が同じ方向に迷いなく走れたのだと思います」
 撮影は約1カ月にわたり、奈良で行われた。細部まで作り込まれた美術やセットにも注目してほしいと陽月さん。中でも、堂下家のセットには監督や美術スタッフの並々ならぬこだわりが感じられる。
「実際にある一軒家をお借りしてセットを作り込んでくださったのですが、そのすべてのディテールが本当に素晴らしい。木彫りのクマ、年季の入ったまごの手、かぎ編みの座布団カバーなど、誰もが実家で見たことある! と思えるものがたくさんありました。関西では洋菓子屋さんのプリンの空き瓶を捨てずにコップとして使う習慣があって、それをセットの中に見つけたときは驚きました。宝塚(歌劇団)時代に「関西では当たり前やで」って教えてもらったのを思い出しましたね(笑)」
 一度は挫折した画家の道に再び戻ることになる香奈。劇中では、巨大なカンバスにダイナミックに絵を描くシーンも。
「美術プロデューサーとしても参加されている画家の弓手研平先生に絵の指導をしていただきました。どんな作品が登場するのかはぜひ映画で見てほしいのですが、先生に絵の描き方や技法、絵に対する考え方などをお話していただき、私にとって大きな糧になりました。短時間のレクチャーではなく、撮影中はいつも近くで見守ってくださっていたので心強く、ありがたかったです」
 近年は舞台のほか、映画やドラマなど映像作品でも活躍。
宝塚時代は、映像に残ることが怖いと感じていた時期もあったそう。
「当時は舞台を録音したものを聞き返して一日の反省をしていました。そうすると、何度も聞き過ぎて粗しか見えなくなってしまい、自分の映像や録音した音声を聞くのが怖いというか緊張するようになったんです。だから自分には舞台が一番向いていると思っていた。でも、ある日映画を見たときに、この一瞬のきらめきがずっと残って、自分が死んだあとも見てもらえるかもしれない。それって素晴らしいことだしうらやましいなって。私にとって映像作品は、怖いけど魅力的なものでした」
 陽月さんは自身の性格を「怖がりでネガティブ」と分析する。仕事の現場ではいつも緊張してしまうと語るが、最近はそんな自分も受け入れられるようになった。
「20代や30代前半は自分の性格をマイナスに感じていたけど、図々しくなってきたのか、もうしょうがない!と思えるようになりました。諦めてからスタートしたほうが楽だなと。最近は自分のことを“ネガティブがぐるっと一周回って超ポジティブ”と表現しています(笑)」
 プライベートでは自分の体と向き合うため、パーソナルトレーニングを開始。新しいことにチャレンジする楽しさを実感しているそう。
「自分の体が喜ぶものが何となく分かってきて、今すごく面白いです。2019年ももっと自分に興味を持って追究していきたいですね。若いときは怖くて新しい挑戦がなかなかできない性格だったけど、今は仕事でもプライベートでももっと新しい世界を見てみたいです」


PHOTO / Mizuaki Wakahara(D-CORD MANAGEMENT LTD.)
STYLING / miki
HAIR&MAKE / Atsuko Hirose
TEXT / Yukari Tanaka


Profile
1980年生まれ。1998年に宝塚音楽学校入学。2000年、宝塚歌劇団に入団し星組に配属。2007年には宙組娘役トップに就任。2009年に 宝塚歌劇団を退団し、その後は舞台、映画、ドラマ、バラエティ番組などで幅広く活躍中。2019年は、映画『かぞくわり』のほか、『二階堂家物語』、『あの日のオルガン』も公開待機中。

Vegas「かぞくわり」
 監督・脚本/塩崎祥平
 出演/陽月華、石井由多加、佃井皆美、木下彩音、
 松村武、竹下景子、小日向文世 他
 2019年1月19日(土)有楽町スバル座・TOHOシネマズ橿原ほか全国順次公開


(C)2018かぞくわりLLP