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Special Interview 吉岡里帆

直木賞作家の辻村深月の同名小説を原作に、日本のアニメ業界での成功したアニメの称号“ハケン(覇権)”を手にすべく奮闘する者たちの姿を描いた『ハケンアニメ!』が映画化。主演の吉岡里帆さんが演じるのは地方公務員からアニメ業界に飛び込み、監督として成長していく斎藤瞳役。
笑顔を封印し、仕事一筋の新境地に挑んだ吉岡さんに作品へかけた想いを伺った。


役者になったとき立てた目標を、
まさにこの作品でひとつ果たせた気がします


 普段は表に出ることがないアニメ制作の現場で繰り広げられる熱いドラマを描いた『ハケンアニメ!』。地方公務員からアニメ業界に飛び込んだ28歳の斎藤瞳は、自身がこの業界を目指すきっかけとなった作品を、監督デビュー作で生みだしたスター監督、王子千晴と覇権を争うことになる。天才と言われながらもスランプに陥り8 年ぶりの監督復帰を果たす王子を前に、瞳は個性的な仲間とともに闘いに挑むというストーリーだ。
「瞳との共通点は、探究心を燃やしているところですね。私も映画やドラマ、舞台など、作品に携わるときはどうしたら面白くなるだろう、どうしたら良くなるだろうと考えてばかり。いつも心の奥底でフツフツと気持ちが燃えている感じです。でも、瞳はひとりで抱え込むタイプですが、私は周囲に相談するタイプです。俳優部以外の部署の方にアイディアをもらったり、話し合いをして作品を作りあげていくのが好きなので、そこは大きく違うかなと思います」
「でも、同じ20代の働く女性として共感できる部分はたくさんあった」と吉岡さんは続ける。
「子供じゃないですし、でも、ベテランでもない。社会に出て自分のやりたいことを言うことはできるけれど、結果を残すというプレッシャーにまだ慣れていない… そういう感覚はよくわかりました。私自身もまだ主演作は数少ないですし、経験値も全然足りない。周囲のスタッフさんたちに支えてもらって、やっと立てている状態です。その年齢ならではの立ち位置というか、悩みはとても共感できました。でも嬉しかったのが、完成試写を見た原作者の辻村深月さんが“主演をやるプレッシャーが瞳の役柄とリンクしていて、この役を吉岡さんにお願いしてよかった”と言ってくださったこと。私のつたなさが生きる瞬間があるんだと思えて嬉しかったです」
 ご自身のことを不器用で準備に時間がかかるタイプと話す吉岡さん。
「臆病なので、準備をしっかりしないとダメなんです。今回もアニメーション監督の役と聞いて、楽しそう! と思う前に心配になっちゃう。不安が最初に来ちゃうので、撮影に入る前にひと通り勉強しました。部署同士ではどういう会話がされるのか、アニメ監督とはどんな仕事なのか。実際に女性のアニメ監督の方にマンツーマンで教えていただく時間も作っていただきました。ペンタブで絵を描く練習もしっかりしたんです。本編で瞳が描く絵を真似しながらコツコツと。でも実際本編では私の手元はほとんどフューチャーされませんでしたけど(笑)」
 新人監督として実力を証明しようと意気込むものの、いざ制作現場に出向くとうまく立ち回れない瞳。でも決して諦めないのは、“見ている人に魔法をかけるような作品を作りたい!”という熱い想いがあるから。切磋琢磨しながら突き進む姿は何かに夢中に取り組んだことがある人ならきっと共感するに違いない。仕事を始めた頃の初心を思い出す人もいるだろう。
「私も役者になりたての頃に自分に立てた目標を思い出しました。“表に出ない人たちの声を代弁できる役者でいたい”という想いがずっとあるのですが、今回の役はまさにそのひとつだった気がします」
 自分がやってみたいと思う作品には巡り会えている気がする、と続ける吉岡さん。
「以前『空の青さを知る人よ』で、声優を担当させていただいたのですが、その時にアニメーターの方たちとお話しさせていただく時間があって、みなさん“あのカット、私が担当したんです!”“あのシーンは僕が担当しました!”と、教えてくださって。そのキラキラした表情がとっても印象的で、こんなに大勢の人たちがコツコツ描いたものが1本の大きな作品になって、そこに私の声を入れさせてもらえたと思うと、感極まるものがありました。そのときからずっとアニメーターの方は本当にかっこいいと思っていたので、その想いをここまでぶつけられる作品に出会えたのは運命だと思います。引き寄せられたのだと思います、絶対」
 “好き”なものに対してまっすぐ懸命に向き合う人たちに捧げる、お仕事映画『ハケンアニメ!』。瞳たちは覇権を獲ることができるのか?胸熱必至なバトルの行方を見届けてほしい。


Photo / Ryuta Seki
Styling / MAKI MARUKO
Hair&Make / MIFUNE
Text / Satoko Nemotoo

Profile
1993年生まれ。2016年、NHK連続テレビ小説『あさが来た』で注目を集め、映画『見えない目撃者』、『パラレルワールド・ラブストーリー』の2作品で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を獲得。『ホリックxxxHOLiC 』では、妖艶な悪役姿も話題に。『レンアイ漫画家』、『しずかちゃんとパパ』など、出演ドラマも多数。待機作に5月27日放送開始の『WOWOWオリジナルドラマ 椅子』(WOWOW)など。その他、舞台やCM、声優やラジオなどマルチに活躍中。


Vegas 『ハケンアニメ!』
 原作/辻村深月「ハケンアニメ!」(マガジンハウス刊)
 監督/吉野耕平 脚本/政池洋佑
 出演/吉岡里帆、中村倫也、柄本佑、尾野真千子 他
 公開/5月20日(金)より、絶賛公開中

 (C)2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会