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Pick up Interview 篠原かをり

苦手な人も多い虫も実は人間味に溢れてる。少しでも興味を持ってもらえたら。

『なぜ動物園のゴリラはうんこを投げるの?』という衝撃的な帯が目を引くのは、篠原かをりさんの4作目となる著書『フムフム、がってん! いきものビックリ仰天クイズ』だ。
「私も子供の頃から児童書や図鑑を見て育ったので、児童書を書かないかという話を頂いたときは嬉しかったです。難しかったのは子供でもわかるように専門用語を使わず説明するところ。でもおかげで誰にでもわかりやすい本になったと思います。大人でも充分楽しめると思いますよ」
 そう話し始めた篠原さんは大の生き物好きとして有名。家ではラットやヤモリ、タランチュラをはじめ400匹以上の昆虫と暮らしているというから驚きだ。
「子供の頃から生き物のいる所=面白い場所、いない場所=つまらない場所という感覚でした。それに同世代の子供たちはアンパンマンから始まって、プリキュアにハマって…と興味が移行する段階があるんですけど、虫にはそれがない。調べても調べても新しいことが出てくるので、他に興味をもつきっかけがつかめないまま今に至るんですよね」
 そこまで篠原さんを魅了する昆虫の魅力とは何なのだろう? 以前、テレビ番組でコスタリカを訪れた篠原さんが幻の昆虫に出会って号泣していたシーンが頭をよぎった。
「“プラチナコガネ”に出会ったときですね。あのときは私もまさか自分が泣くなんて思ってなくて驚きました。きっとファン心理なんでしょうね。ほら、よく憧れのアイドルやアーティストのライブに行って泣いてる人っているじゃないですか。私、全然気持ちがわからなかったんですが“プラチナコガネ”に会ったときに『ずっと見てました! ずっと会いたかったです!!』っていう気持ちになって。あぁ、本当にいるんだ、動いてるんだって感動して。きっとライブで涙する人たちもこういう気持ちなんだろうなぁって思いました」
 なんだか一気に親近感が湧いてしまった。「それに虫って意外と人間味に溢れてる」と篠原さんは続ける。
「アメンボってオスがメスに交尾を断られると、水面を叩いてアメンボの天敵である“マツモムシ”を呼寄せるんです。自分の想い通りにならないからって、相手の嫌がるものを呼んで強くなった気でいるなんてちっぽけだと思いませんか? だからパワハラ上司とか、権力を振りかざして横柄な態度をとる人に出会ったら“このアメンボ野郎!”とでも思ってればいいんです。ちょっと気がラクになるでしょう? それに、生き物はたいていメスが強いんです。クモだって交尾の後はオスはメスのエサになるだけだし、今までメスしかいないと思われていたチョウチンアンコウは、実は体のゴツゴツしたコブがオスだって判明されたんですよ。メスに噛み付いたオスは脳や血管が退化し、最終的に精巣の機能しか残らないんです」
 次々と出てくる篠原さんの知識にただただ驚きつつ、最近では人間界でも草食男子しかり、オスが弱いと言われている。人間界も生物界のようになってしまうのだろうか…?
「そうとも言えないんです。さっきのチョウチンアンコウの話だと、深海はエサが少ない。だからオスとメスがバラバラに生きてエサ争いをするより、合体して1匹として生きて行く方が効率がいい。見た目の強さという面はなくなったけれど、別の強さを手に入れたというか、新しい時代に適合した生き方になった結果、弱く見えているという可能性もあると思いますね」
 なるほど…。奥が深過ぎる生き物の世界。『フムフム、がってん! いきものビックリ仰天クイズ』にはそんな生き物たちの雑学が満載だ。もちろん、冒頭のゴリラの正解も著書の中にあるので、ぜひチェックして欲しい。


TEXT /Satoko Nemoto PHOTO / Isamu Ebisawa

Profile/1995年生まれ。慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科。第10回「出版甲子園」にてグランプリを受賞し、同年に「恋する昆虫図鑑~ムシとヒトの恋愛戦略」で作家デビュー。生き物に関するありとあらゆる知識を持ち、独特の切り口や表現が話題に。TBS「新どうぶつ奇想天外!」やニッポン放送「篠原かをりのいきいきプラネット」ほか、テレビやラジオで活躍中。

Vegas『フムフム、がってん! いきものビックリ仰天クイズ』
 田中 チズコ(著)
 篠原 かをり(著)
 文芸春秋刊 1,188円


■Cover Interview 新木優子