ホーム > Pick up Interview 大倉孝二

Pick up Interview 大倉孝二

お声がかかった嬉しさと同時に“これ、やれるの?”という
不安がどんどん加速しています

 1996年の初演以降何度も再演され、松尾作品初の海外公演も実現した『マシーン日記』が、大根仁演出で復活する。
「お話を頂いたときは、まずお声をかけていただいたことが光栄でした。名作ですし、これはやった方がいいんじゃないかと。でもそれと同時にプレッシャーも大きくて。過去に松尾さんご自身も演じてこられたこの役柄を自分がやり切れるのかという不安が押し寄せてきました」
 小さな町工場を舞台に、男女4人の情念渦巻く愛憎劇が始まる… というストーリーで、大倉さんが演じるのは、小さな町工場・ツジヨシ兄弟電業を経営するアキトシ。
「昨日台本が届いたばかりで。ちゃんと読まないとと思いつつ、本を開いてすぐにげんなりしました」と大倉さんは笑う。
「こんなことをやるのか…、大変だなって。松尾作品はセリフが独特で、ほんと、何言ってるかわからないんですよ。戯曲で見ると“え、どうやってやるの?何これ?”ってものばっかり。もうね、こんな会話になってないようなセリフを書いていいんだって感じです(笑)。でも、それが実際にお芝居になると違和感がない上に、ちゃんと納得できるからすごいんですよね。そこに松尾さんの凄さを感じました」
 アキトシの役作りについて伺うと。「過去の作品も拝見させて頂いたのですが、松尾さんの紡ぐワードのインパクトと、役者さんのパワーとテンションの高さが強烈すぎて、内容をあまり覚えてないんですよね…。なので、まだ全体像とか何もわかっていません。これから少し落ち着いて台本を読もうと思っていますけど、考えるよりもワンシーンワンシーンやりながら最終的に形になればいいなと思っています。元々、役柄を分析して全体像を作ってから演じるたちでもないんです。頭で考えても、それを答えや成果に導ける期待がもてないので、自分自身に。だからやってみるしかないんです」
 ハイテンションをキープしたままの舞台、しかも出演者は4人だけ。かなりハードな体力勝負になりそうだ。
「僕は基本、出番が少なくてオイシイというのが1番ありがたいんです。だから全然こんなに出たくはないんですけどね、こんなに多いのは困りますって感じです(笑)。ただ、一人芝居をやったことがあるので、それに比べたら1/4ですから(笑)。これから4人がどんな感じになっていくかもまだ未知ですけど、あまりナーバスになってしまうと辛そうなので、頑張りつつも余裕をなくさないようにやりたいと思っています」
 町工場を舞台に展開する歪んだ日常。男女4人が織りなすおかしくも切なく、そして狂気すら感じる究極の愛が描かれた『マシーン日記』。恋愛カタストロフィの決定版とも言われてきた本作にちなんで、大倉さんに起きた最近の悲劇を聞いてみると。
「この間まで茨城でしばらくロケに行っていたのですが、とにかく寒くて。ただでさえ山の麓で寒いのに感染対策で換気をしなくちゃいけないから窓がずっと開けっ放しで。しかもこれまた感染対策で暖かい飲み物や食べ物を置いてシェアすることができないので、お弁当も冷えっ冷えなんです。もちろん頂けるだけでとてもありがたいんですけど、さすがに冷えたものしか摂取できないという日々を送ると体調が悪くなりましたね。心も。やっぱりあったかいものって大事だなと思いました。皆さんもあったかいもの食べてくださ いね(笑)」
 最後に、これから始まる稽古への意気込みと作品の見どころを聞くと。
「僕らがやれる作業は、一生懸命目の前のことをやってお客さんに観てもらうだけ。だからどういう風に観てもらいたいとか、そういうのは僕自身が思うことではない気がします。過去の作品を観た人もこれが初見になる人も、先入観があってもなくてもただ楽しんで頂けたら嬉しいです。そのためにも明日から頑張る。それしかないです」


PHOTO / Isamu Ebisawa
STYLING / JOE(JOE TOK YO)
HAIR&MAKE / ERIKO YAMAMOTO
TEXT / Satoko Nemoto
衣装 / シャツ (エストネーション TEL0120-503-971)


Profile
1974年生まれ。劇団ナイロン100℃所属。劇団の作品ほか、近年の主な舞台作品に2018年「贋作・桜の森の満開の下」、2019年「美しく青く」「ドクター・ホフマンのサナトリウム~カフカ第4の長編~」など。映画「ピンポン」「検察側の罪人」「ロマンスドール」をはじめ、ドラマ「伝説のお母さん」「妖怪シェアハウス」「バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~」など、多くの映画・ドラマでも活躍中。21年2月から放送のドラマスペシャル「神様のカルテ」に出演予定。

Vegas COCOON PRODUCTION 2021
「マシーン日記」
 作/松尾スズキ 演出/大根仁
 音楽/岩寺基晴、江島啓一、岡崎英美、草刈愛美(サカナクション)
 出演/横山裕、大倉孝二、森川葵、秋山菜津子
 公演/ 2 月3 日(水)~ 27 日(土)
 会場/ Bunkamura シアターコクーン




■Cover Interview 深川麻衣